前の記事よりつづき
佐貫頭首工から風見発電所までの流れをたどる
今回は風見発電所までの幹線導水路(鬼怒川中部用水路)をたどっていきます。
佐野頭首工から取り入れられた鬼怒川の水は、幹線導水路を通り、塩谷町風見山田にある「風見発電所」まで流れていきますが、その導水路は主にほぼ地下を流れているので、地図上でも点線で表されています。
しかし、導水路をたどっていくと、塩谷町内でところどころ地上に出る場所があります。
「市の堀用水沿革史」に掲載されている、主要工事の内容によると、導水幹線が開渠(地上に出ている水路)の部分が3か所あることが分かります。
それぞれのポイントを巡っていきましょう。
第1号開渠と沈砂池
まずは、佐貫頭首工からもほど近い、県道77号宇都宮船生高徳線沿いに、「第1号開渠」と沈砂池があります。
この部分はGoogleマップでも、川幅が広くなっている場所が確認できます。
沈砂池(ちんさち)とは、利水施設の導入部にある人工池のことです。
3つに分かれた後、川幅が広がっています。
この沈砂池では、流れてきた水の中から浮遊物や固体を取り除く役割があります。
3つにわかれた流れは再び1つになり、また山の中の地下へを進んでいきます。
ここからしばらく山の中。
山の手前で、地元を流れる泉川と立体交差しています。
塩谷町上沢の第2号開渠
「第2号開渠」は、塩谷町上沢地区付近。
山を抜けた導水路が、またここで地上に出てきます。
距離にして200mほどでしょうか。
そして道路の下の暗渠に。トンネルの前には何か文字らしきものが。
「一簣功潤萬頃」(右から)
漢詩でしょうか?
(すみません、私の力では翻訳できず^^;)
「一簣之功(いっきのこう)」というのは、「仕事を完遂する間際の、最後のひと踏ん張りのこと」を表す四字熟語らしいので、なんとなくそういうニュアンスの言葉だと思われます。
そして、ここからまたしばらく地下に潜ります。
第3号開渠〜市の堀用水を“くぐれる”唯一のスポット
次に導水路が出てくる「第3号開渠」は、県道62号大宮佐貫線付近。
ここは、導水路と道路が立体交差するポイントなんですが・・
なんと、ここは道路が下で導水路が上になっている「水路橋」なのです。
市の堀用水を唯一くぐれる珍しいスポットでは?
(厳密にはまだ“導水幹線”ですが)
トンネルの上に川が流れている場所といえば、栃木県内にも「ひばらさんの栃木探訪」でも紹介した那須町の「膳棚水路橋」があります。この橋は土木遺産にも認定されている水路橋です。
参照:
階段を上り、近づいてみると水が激しく流れる音がします。
動画はこちら↓
水路橋は約100mほどの開渠です。
雨が降った後なので水量がすごかったです。
ここのトンネルの出口付近にも、文字が彫られています。
「沃水至千萬頃」(右から)と書いてあるのでしょうか。
(追記)
Twitterで2つの石碑の意味を解読していただけた方がおりました。
ありがたい〜👏 https://t.co/ANUj42Ik6P
— ひばらさん (@hibarasan) January 24, 2022
ありがとうございます。
ここから導水路はまた山の中に入り、次に顔を出すのは風見発電所の手前です。
風見発電所
風見発電所では、約30mの落差を利用して水力発電を行います。
現在は老朽化にともない、平成28(2016)年度から全面改修事業を進めており、令和2(2020)年10月から発電を停止中です。
工事の一般見学もしておらず、発電所カードの配布も一時中止しています。
工事の様子は栃木県のホームページ参照:
運転再開は令和5(2023)年4月の予定とのこと。
発電所を通過した水は、ここから「市の堀幹線(東幹線用水路)」と「逆木幹線(西幹線用水路)」の2つに分配され、下流に農業用水として使用されていきます。
(つづく)
○第1号開渠
栃木県塩谷郡塩谷町佐貫
○第2号開渠
栃木県塩谷郡塩谷町上沢
○第3号開渠(水路橋)
栃木県塩谷郡塩谷町風見山田
○風見発電所
栃木県塩谷郡塩谷町風見山田614
・「市の堀〜市の堀用水沿革史」(昭和53年発行・石山憲三編)
・風見発電所全面改修事業について(栃木県ホームページ)